海外へ移住する場合には、必ずビザの問題をクリアにする必要があります。観光目的の短期滞在であれば、日本人は多くの国でビザ取得が免除されていますが、長期間になる場合は別途申請をしなければなりません。
ベトナムでは、観光での滞在期間が45日以内であれば免除されますが、ビジネス目的や45日を超える滞在の場合はビザの取得が必要です。ビザを取得する場合は所定の書類や別途費用が必要になります。
本記事では、ベトナム移住に必要なビザの種類や取得条件をまとめました。現在ベトナムへの移住や長期滞在を考えている人はぜひ記事を確認してみてください。
ベトナム移住に必要なビザの種類
ベトナムで長期滞在できるビザにはさまざまな種類がありますが、以下4つが現実的な選択肢となります。
- 就労ビザ
- ベトナム人との結婚によるビザ免除
- 投資家ビザ
- 学生ビザ
- 家族帯同・その他
それぞれ詳しく解説していきます。
就労ビザ
ベトナムの現地法人に就職した際に必要になるビザです。会社にスポンサーになってもらう形で発行し、有効期間は1年もしくは2年に設定されることが多いです。現地法人への就職が必要ですが、ベトナムで1年以上の滞在が許可されます。長期滞在でもっとも現実的な方法と言っていいでしょう。
現地で就職する際は、まず「労働許可証(ワークパーミット)」、次に「就労ビザ」、最後に「一時在留許可証(テンポラリーレジデンスカード)」を取得する流れになります。「労働許可証(ワークパーミット)」と「就労ビザ」は混合されがちですが、これらは別ですので注意してください。
就労ビザは、書類の集まり具合にもよりますが、申請から取得まで合計4ヶ月程度必要です。また、年末年始やテト(旧正月)期間はベトナム労働局の手続きが止まり、余計に時間がかかることがあるので注意してください。
ベトナム人との結婚によるビザ免除
ベトナム人との結婚によって1年間もしくは3年間、5年間滞在できます。ベトナムでは「結婚ビザ」「配偶者ビザ」を取得する場合は1年間、ビザ免除制度を利用する場合は3年間もしくは5年間の有効期限が付与します。
ベトナム人との結婚によるビザ免除制度は、2つから選ぶことになります。具体的には以下の通りです。
- 3年間滞在可能
- 5年間滞在可能だが、180日ごとにベトナムからの出国が必要
3年間はベトナムに住む人、5年間は海外を拠点とする人が選択するケースが多いです。
なお、ベトナム人との結婚証明書があれば、労働許可証不要で働くことができます(企業の雇用報告承認の申請が必要)。他のビザと比較しても滞在可能期間が長く手続きも少ないので、ベトナムで長期的に生活しながら働きたい方にとっては、非常に有利な選択肢と言えるでしょう。
投資家ビザ
投資家ビザとは、ベトナムで起業するために出資したり、企業に対して投資する人に対して発給されるビザです。投資家ビザは出資・投資した金額によって取得できる種類が変わります。
出資額 | 滞在期間(最長) | レジデンスカードの発行 |
---|---|---|
1,000億VND(6億円)以上 | 5年間 | 可 |
500億VND〜1,000億VND(約3億円〜6億円) | 5年間 | 可 |
30億VND〜500億VND(約1,800万円〜3億円) | 3年間 | 可 |
30億VND(約1,800万円)以下 | 1年間 | 不可(ビザのみ) |
年々出資額の下限は上昇しており、取得も難しくなっています。中小企業の代表者や大規模な資金を投じて投資家向けのビザであり、対象になる人はあまり多くないかもしれません。
学生ビザ
学生ビザとは大学や短大、語学学校など、ベトナムの公認教育機関に学生として入学する人に対して発行されるビザです。期間は3ヶ月、6ヶ月、12ヶ月で、それぞれ一度切り入国が可能なシングルビザと出入国自由のマルチビザが存在します。
ベトナムの大学の学費は、年間「5,000万VND〜1億VND(約30万円〜60万円)」程度と比較的安価です。学校に通いながら長期で滞在し、ベトナムの文化や経済、語学を学ぶ人も少なくありません。
ただし、ベトナムの学生ビザは発行のためには一定の資金が必要である上に、就労が認められていません。仕事をするためには入国管理局から「資格外活動許可」を得ることが必要です。資格外活動許可を得ると、週28時間以内の範囲でアルバイトができますが、当面の授業料、生活費、その他の費用をカバーする資金が求められます。
家族帯同・その他
家族帯同ビザとは、就労ビザや駐在員、学生ビザなどを持つ配偶者、親がいる人に対して発給されるビザです。有効期間は最長1年間で、就労は認められていません。もし、現地で就職をする場合には、ビザを切り替え手続きを行う必要があります。
今回紹介した以外にも、いくつか長期滞在する方法が存在します。具体的な例としては「APECビジネストラベルカード」や「観光ビザでのビザラン」などが挙げられます。「APECビジネストラベルカード」とは、APEC域内(ベトナム、米国、インドネシア、韓国、マレーシア、オーストラリアなど21ヵ国)に入国できるカードで、ベトナムには最長90日間滞在が可能です。
「観光ビザでのビザラン」とは、期限内に出入国を繰り返し、ビザの期限を延長し続ける方法です。詳しくは次の見出しで解説します。
ベトナムでのビザランについて
前の見出しでも触れたように、ビザランとはビザの滞在期限が切れる前に一度国外へ出て、再度入国することで新たな滞在期間を更新する方法です。東南アジアではよく使われており、ベトナムでも一部の外国人に利用されています。
ビザランは陸路と空路いずれも可能ですが、負担を減らすために陸路が選ばれることが一般的です。ベトナムでは国境で接している中国やラオス、カンボジアとの国境に行き、スタンプだけもらってすぐに引き返すことで、ビザを更新する人が多いです。
しかし、近年ベトナム政府は観光ビザを使った継続滞在や就労目的の入国に対して厳格化しています。頻度が増えると、入国拒否や再入国拒否されるリスクもあるため、正規の方法で長期滞在資格を取得することが望ましいといえるでしょう。
まとめ
ベトナムに長期滞在する場合、ビザの問題への適切な対処は欠かせません。例えば、現地企業で働くなら就労ビザと労働許可証が必要であり、ベトナム人との結婚による長期滞在を希望する場合は、結婚証明に基づいた滞在許可の取得が有利な選択肢になります。
一方で観光ビザを使って一時的な滞在を繰り返すビザランは、過去には比較的柔軟に行えましたが、近年の法改正や入国管理の厳格化により、リスクの高い方法となっています。入国拒否やブラックリスト入りの可能性もあるため、正規のビザを取得して法的に安定した立場を確保することが重要です。